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【HQ】春が始まる。(烏野逆ハー)

第4章 変化




「……………。」



教室の窓からベランダに出て、黒板消しを叩き合わせる。
部活停止期間の放課後である。



掃除当番を終えたら、このまま下校できることになっている。



何も考えないで出来る作業が、ありがたかった。



昨夜、決意を新たにしたらしい菅原先輩は、いつもの爽やかな笑顔を残して何事もなかったかのように帰っていった。



高校に入ってからまだ1ヶ月半ほどしか経っていないのに、同じ部活の人二人とキスしてしまった。



どこかの少女漫画の主人公にでもなった気分である。
ぼーっとしていたら、急に突風にあおられた。



「うわっ…!」



黒板消しがひとつ、私の手から逃げていく。
風は強く、黒板消しは簡単に手すりを飛び越えていってしまった。



まずい、下を歩いてる人に当たったりしたら…



慌てて手すりから乗り出して下を確認すれば、黒板消しが落下していく軌道上に女子生徒が歩いていた。



「よけてくださいー!!」



必死に叫んだ。
私の声に気付き、こちらを見上げたその人は、咄嗟に頭をかばっている。



その時だった。
颯爽とヒーローが現れる。



私の視界の隅から素早く黒いものが動いた。
次の瞬間、その黒い影は、前に出て女子生徒をかばい、完璧に黒板消しをキャッチしてみせた。



思わず、その場にへたりこみそうになる。
女の人に当たらなくてよかった…。



そう思い、改めてヒーローの顔を確認した。
そのヒーローは、私のよく知る人物だった。


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