第4章 変化
そう言って、菅原先輩は立ち上がって私の目の前まで来る。
ベッドに腰掛けていた私を立たせて、手近な壁に追い詰めた。
「こう、されたんじゃないの?」
菅原先輩は、私の顔の横の壁にゆっくり手をついた。
影山くんとは対象的に、その手のつき方がソフトで、壁ドンと言うよりは壁トンと言った感じだった。
「す、すが…菅原先輩…」
いきなりの展開に、慌てふためく。
でも目の前の先輩はいたって冷静で、私を切ない表情で見下ろしてくる。
「もうわかってると思うけど…俺、菜月が好きだよ。」
菅原先輩の言葉に、息ができなくなる。
「菜月は…影山が好き?」
「え…わ、私は…」
好きとか、そういう気持ちがまだハッキリと分からない。
中学まで自分が恋だと思っていたものは、おままごと程度のものだったのだと高校に入ってから知った。
「そういうの…まだ、わかりません…」
私の答えを聞いた先輩は、更に私との距離を詰めた。
もう逃げ場はない。
「影山のことが好きだって言わないんだったら俺…。」
菅原先輩の顔が近付く。
思わず、目を閉じた。
けれど、前の時と同じように唇に柔らかい感触はふってこない。
ゆっくり目を開けると、唇が触れ合う寸前の距離に、菅原先輩はいた。
「今日は我慢、しないからな。」
その言葉の直後、唇が重なった。