第4章 変化
「菅原くんは、同学年に好きな子がいるの?」
「いや、僕は…」
お母さんと話す時だけ一人称がいつもの『俺』から『僕』になることに、少しドキッとする。
菅原先輩は一度言葉を切って、隣の私に視線をよこした。
「頑張ってはいるんですけど、なかなか気付いてもらえなくて。」
な?と照れた様子で菅原先輩は笑った。
「え……//」
お母さんがやけに静かだと思ったら、私と同様に目をぱちくりさせて固まっていた。
そして、しばらくするとハッとしたように視線を菅原先輩に向け、先輩の両手を握った。
何か、嫌な予感…
「菅原くん!菜月のこと、よろしくお願いします!あなたなら私、本当に安心だわ…」
「え、そんな、お母さん…」
「この子ボーッとしてるし何か危なっかしいでしょう?いつも本当に心配してるの…」
顔から火が出そうだった。
もう本当にやめて、と大きな声を出そうとした私よりも、菅原先輩の返答のほうが早かった。
「お母さん。僕が菜月さんを守れる存在になれるように、僕もっと頑張りますから。」
菅原先輩の言葉に、言わずもがな親子二人で沸騰した。
そして、気を利かせたつもりなのか、
「片付けるから、さっさと二人で部屋に行きなさい」
とお母さんに無理矢理ダイニングを追い出されてしまった。