第4章 変化
家に着いたあと、菅原先輩から好物が麻婆豆腐だと聞き出したお母さんは、張り切って夕食の支度を始めた。
家は対面キッチンだから、お母さんはダイニングテーブルに座った私達に、料理中もしきりに話しかけてくる。
普段もそうなのだけど、今日はいつもより更に口数が多い。
菅原先輩が来たことが本当に嬉しいようだ。
料理が完成し、夕食が始まってからもお母さんのテンションは落ち着くどころか上がる一方で、私は度々隣の菅原先輩の様子を窺うのだった。
「これ、すごくおいしいです。」
笑顔でお母さんの料理を褒める菅原先輩は、お世辞を言っているような感じも気を遣っているような感じもなく、いたって自然体だった。
お母さんからの質問攻撃にも笑顔で対応してくれている。
それを見て、私は少しホッとする。
菅原先輩に料理を褒められて調子に乗ったお母さんは次にとんでもない台詞を言い放った。
「将来菜月の旦那さんになってくれたらこれからいつでも食べられるわよー!」
思わず先輩と二人、ご飯を吹き出しそうになる。
二人で軽く咳き込んでいると、お母さんはクスクスと笑った。
「初々しくて可愛いわねー。いいなあ、青春って感じで。」
「お母さん、いい加減にしないと…。私達、別にお母さんが思ってるような関係じゃないから。あんまり言うと菅原先輩に失礼だよ。」
「ええ、そうなの?」
お母さんが目に見えてがっかりしたような様子を見せる。
そして尚も突っ込んだ質問をかぶせる。