第4章 変化
「菜月の帰り道はこんな感じなのかー。いつも帰り、暗くて怖くないか?」
「そうですね…ここらへんはお店も少ないし、あんまり外灯もないから。」
「でも、防犯ベル、ちゃんと持ってるんだな。偉い偉い。何かあったらすぐ鳴らすんだぞ。」
私のバッグに付いている防犯ベルを確認したらしい菅原先輩にそう言われて、この間の影山くんとの出来事が蘇り、思わず苦笑した。
家まで後少しというところまで来たので、私は先輩にそれを伝えようと口を開こうとした。
その時、よく知る声が後ろから響いた。
「菜月?」
「あ、お母さん…」
仕事帰りのお母さんと遭遇してしまった。
よりによって、なんで今…
お母さんは、菅原先輩を見てあからさまに目を輝かせている。
変なことを言わなければいいけど…
「初めまして。烏野高校3年の菅原と言います。菜月さんにはいつも部活でお世話になっています。」
「あらーしっかりした子ね!初めまして。菜月の母です。こちらこそいつもお世話になって…」
「い、いえ、とんでもないです。」
何だか大人の会話が交わされている。
きっちり居住まいを正して挨拶する菅原先輩は、本当にしっかりした大人の男の人、という感じだった。
そんな事を考えていたら、お母さんがはしゃいで菅原先輩にしきりに話しかけていた。
まずい、止めたほうがいいかな。
口を挟もうとしたところで、次にお母さんから出た言葉は、菅原先輩だけでなく私も驚かせるものだった。