第4章 変化
そう言いかけたところで、電車のドアが開き、乗客が降りてくる。
降りきったところで前に並んでいる人達が乗車し始めた。
遅延によって、皆気持ちが急いているから後ろの人にぐいぐい押される。
「うわっ…」
「ほら、行くぞ。」
隣りにいた菅原先輩が、私の手をとって、そのまま電車に乗り込んだ。
「え、菅原先輩、なんで…」
そう言っている間に、電車はさっさとそのドアを閉め、走り始める。
乗り込んだ電車内は超満員で、息苦しいほどだった。
吊革もない位置にいるため、どこにも掴まるところがない。
他の人からの圧迫で支えられているという感じだ。
そして、私の目の前には菅原先輩。
状況が状況だから仕方ないのだけど、体がぴったりくっついている。
心臓が、また悲鳴を上げた。
「大丈夫か?危ないから俺に掴まっときな。」
そう言われたので、首をカクカク何度も縦にふってから先輩の学ランの裾を少しだけ握った。
私の降りる駅に到着し、電車を降りたところで、ようやく久しぶりに呼吸ができたような気持ちになる。
私は、ひとつ深呼吸をしてから先輩に声をかけた。
「あの、菅原先輩、なんで…」
「ああ、割と遅くなっちゃったからさ。家の近くまで送って行こうかと思って。」
「ええ!いや、ほんと大丈夫ですって!」
「うーん、でもせっかくここまで来たしなあ。」
何か、申し訳ないことをしたなあと思っていると菅原先輩が私の顔を覗き込んできた。
「ごめん、迷惑だった?」
「え!迷惑なんてそんなこと…むしろ何か申し訳なかったなあと思って…」
「よし!じゃあ行こう。いいんだよ、俺が勝手にやってるんだから気にしないの。」
ここまで言われたら断れない。
「じゃあ、お願いします…」
2人で、私の家の最寄り駅を出た。