第4章 変化
「わっ…」
私の声に気付いた影山くんが振り返る。
そのまま影山くんに正面から受け止められた。
さっき、「触れたい」なんて言われた直後にこんなことになってしまうなんて。
意識しちゃうよ…。
「ご、ごめん!」
そう言って、即座に離れようとしたものの、それは叶わなかった。
次の瞬間、影山くんの腕が私の背中に回って、ぎゅっと抱きしめられていた。
「お前が自分から飛び込んできたんだからな。」
影山くんの言葉が降ってくる。
私は、もういっぱいいっぱいで満足に息もできない状態だった。
「…さっき、ヒールは禁止だっつったけど…俺といる時だけは、履いてもいい。」
その、上から物言いな感じに、私は影山くんの異名を思い出す。
「王様…」
「ああ?!今なんつった!その口また塞ぐぞコラ!」
「きゃー!!」
ふいに緩んだ影山くんの腕から抜け出すことに成功した。
恥ずかしさと、ドキドキが止まらなくて、私は走って逃げる。
影山くんからは絶対に逃げられないと知っているのに。
「あ、おいこら、待てよ!」
でも、5秒でも、3秒でも、例え1秒であっても時間を稼いでいつもの自分に戻りたくて、私はただ無我夢中で走るのだった。