第4章 変化
駅に到着する頃になっても、結局私の心臓はまだうるさいままだった。
とりあえず、今日はこれでお別れかな。
イベントは楽しかったし、影山くんと元通りになれて嬉しかったけど、いかんせんドキドキしすぎて疲れた。
また明日からは学校だ。
「今日はありがとね、影山くん。すっごく楽しかった。」
「…ああ。…俺も。」
「じゃあ、また明日ね!」
そう言って私は影山くんに背を向ける。
でも、すぐに呼び止められた。
「菜月。」
「ん?」
振り返ると、影山くんは何かの包みらしきものを私に突き出してくる。
「え、何?」
「いいから受け取れよ!」
「う…うん。」
「じゃあな。」
私が受け取ったのを確認すると、それだけ言って影山くんはあっという間に暗闇に消えていってしまった。
「………。」
気になったので、その場で開けてみることにした。
中から出てきたのは、つぶらな瞳でこちらを見つめるピンク色のバリボちゃん。
カバンにつけるのがちょうど良さそうなボールチェーン付きのぬいぐるみだった。
影山くん、ボールから手足はえてるキャラなんて怖いとか言ってたのに…
私が席を外したのは、休憩の時に一度お手洗いに立った時だけなので、その時に買ってくれていたんだ。
嬉しいな。
そう思いながら、小さなバリボちゃんの頭を人差し指で優しく撫でる。
「今日からよろしくね。」
もらったばかりのぬいぐるみを大事にしまってから、私は一人、家路をたどり始めた。