第4章 変化
「そのお題ってやつは例えばどんなのがあるんだ?」
今度は西谷先輩が聞いてくる。
「女性視聴者をドキドキさせるのがテーマみたいだから、やっぱり恋愛系のものが多いですね。最近で言うと、壁ドンしてキスとか。」
「………っ!!!!」
私の言葉を聞いて、ロッカーに荷物を詰めている最中だった影山くんが大げさに肩を震わせた。
明らかに動揺した様子の影山くんを見て、皆不思議そうな顔をする。
私も発言したあとで、しまったと思ったがもう遅かった。
また頬が熱くなっていく。
恐る恐る影山くんの方に視線をやるも、影山くんはロッカーと向かい合せのまま動かない。
「壁ドンかあー。俺もいつかはやってみたいぜ!」
「ノヤッさんなら何かキマリそうだよな!」
西谷先輩と田中先輩のおかげで助かった。
変な空気にならずに済んだ。
ほっとしていると、菅原先輩からの視線に気付く。
でもそれは、いつもの優しげな眼差しではなく、こちらを窺うような種類のものだった。
「どうか、しました?」
そう問うと、
「いや、何でもないよ。ごめんごめん。」
そう言っていつもの先輩に戻る。
私もそれ以上は質問を重ねることはせず、午後の練習は始まった。