第4章 変化
「おい!俺だ!顔見ろ!」
その声に弾かれて顔を上げると、焦った様子の影山くんが、早くそれどうにかしろよと怒鳴る。
「あっ…」
影山くんだったことを確認して、私は防犯ベルを止めた。
辺りに静寂は戻ったものの、まだ耳障りなブザーの音が続いているような気がしてしまう。
「なんで…声、かけてくれればこんなことしなかったのに…殺されるかと思ったよ…」
「……悪かった。声、かけづらくて。」
影山くんもあのことを気にしているんだ。
そりゃそうか。
あの後まともに会話をするのは今が初めてだ。
「具合はもういいのかよ。」
「うん、もう平気。今日は委員会の用事があって午後練行けなかったんだ。」
「そうか。」
その後は少し会話のない状態が続いた。
珍しく私は、影山くんとの沈黙を重苦しく感じる。
心にひっかかるものがあるからだろう。
早く元に戻りたいけど、どうしたら戻れるんだろう。
そう考えていると、隣の影山くんが口を開く気配があった。
「あのよ。実は渡したいもんがあって。」
影山くんはそう言って、自分のカバンを探り、何か紙切れのようなものを1枚渡してきた。
外灯に照らして文字を読む。
それは何かのチケットのようだった。
「バレーフェス…?」
「ああ。自治体のイベントなんだけどよ、全日本の選手も来るんだ。地元のチームとゲームしたりするらしい。」
「ええええすごい!!」
自治体のイベントでこんなのがあるなんて。
しかも今現在、現役で活躍中の大人気男子バレー選手も来るらしい。
その選手は宮城出身なので、特別に話が通ったのかもしれない。
甘いマスクにチーム内でも長身の部類で、ゲームメイクが上手いその選手はファンの間で「王子様」と呼ばれるような存在だった。
私は、王子様的な意味では興味はないものの、その選手のプレーには一目置いていたため、驚きを隠せなかった。
あれが生で観られるのか…!