第3章 合宿
「影山くん…」
「何か様子がおかしかったような気がしたから…」
影山くんはそう呟いて、こちらに一歩近付こうとする。
私は焦って、つい大きな声を出してしまった。
「来ないで!」
それを聞いた影山くんは、明らかに傷ついたような様子を見せ、足を止めた。
「違うの…何か、風邪ひいたっぽくて。移ったら嫌だから、来ないで。大丈夫だから、体育館行ってて?」
影山くんの誤解をといてから、体育館へ戻るよう促す。
お願い、早く行って。
その願いとは裏腹に、私の言葉を聞いた影山くんはしゃがみこんでいる私の前に回り込む。
「そんなこと言っても…立てんのかよ、そんなんで。」
影山くんの手を借りて何とか立ち上がる。
「ありが、と…」
「バカ、こんな時に礼なんていいんだよ。手、物凄ぇ熱いぞ。相当熱あるんじゃないか。」
そう言われたと思ったら、体がいきなりふわりと宙に浮いた。
驚いて、働かない頭で状況を確認する。
影山くんは、私をお姫様抱っこしていた。
「ほら、頭こっちに預けとけよ。辛いだろ。」
「だ、だめだってこんな…離して…本当に移る…」
「嫌だ。」
影山くんは力強くそう言った。
「俺は絶対移らねえ。約束する。だから大人しくしとけ。」
頑なな様子の影山くんにそれ以上はもう何も言えなくて、重い頭を影山くんの言う通り、彼に預けた。