第3章 合宿
額にひんやり冷たい感触がした。
心地よくて薄目を開けると、私の額に手を当てる影山くんの姿が見える。
私と目が合うと、すぐに触れていた手を引っ込めた。
「悪い、起こしたか。」
「ううん…気持ちよかった。」
そう伝えると、影山くんは少し顔を赤らめた。
どうやら私の部屋まで運んで、布団に寝かせてくれたようだ。
途中で意識が途切れていたので、覚えていないけれど。
「先生にはもう報告しといた。そのうち来ると思う。」
「ありがと……。って、そうだよ、影山くん練習試合…」
「ああ。もう行く。」
そう言って私の布団の隣、畳に直に腰を下ろしていた影山くんは立ち上がった。
「あ、待って…」
「バカ、体起こすな。いいから寝てろ。」
「練習試合、見たかったな…」
影山くんに窘められて、寝転がったままそう呟くと、
「俺達の試合なんて、お前はこれから腐るほど見られるだろ」
と言われた。
まあ、そうなんだけど…。
「…とにかく、早く治せよ。」
それだけ言って、影山くんは部屋を出ていった。
その少し後で、武田先生が慌てた様子で部屋に入ってきた。
「水沢さん、大丈夫かい?」
「武田先生…すみません。」
「謝らなくていいよ。親御さんにはもう連絡ついたから、迎えに来てもらえるからね。」
武田先生の優しい笑顔に安心する。
迎えに来てもらえることになったので、帰りのバスで皆に風邪菌を蔓延させる心配はなくなった。
ほっとすると、急に眠気が押し寄せてくる。
迎えが来たらまた呼びにくるから。
そう言って武田先生も練習試合の方に行ってしまった。
私は、お母さんがやってくるまで一眠りすることにした。
瞼を閉じると、今ちょうど行われているであろう練習試合の風景がみえるような気がした。