第3章 合宿
それを見て、菅原先輩が微笑む。
「明日の練習試合、楽しみだな!」
「はい!」
「じゃあ俺、そろそろ行く。あんまり女の子の部屋に長居するのも良くないべ。」
そう言って菅原先輩は立ち上がり、ドアの方へと向かう。
それを見た私も慌てて立ち上がって後を追う。
「あ、あの、先輩。ありがとうございま…」
「風呂入って、なるべく早く寝るんだぞ!」
振り返った先輩は、私の髪をわしゃわしゃ撫でてくる。
私のお礼を遮ったのは、さっきの涙に触れないようにするためだろうか。
だとすれば、なんて出来た人なんだろう。
私に気を遣わせることなく笑顔を引き出し、それを確認したところで何も主張せず去っていく。
涙の理由については、本当に何も聞かれなかった。
菅原先輩がいなくなった部屋で私は、一人の空間を持て余す。
しばらく先輩が出て行ったドアを見つめた後で、私もお風呂へ向かうためにもう一度部屋を出た。