第3章 合宿
部屋に着いたあと、私を座らせた菅原先輩は、ちょっと待ってなと言って部屋を出てまたすぐに戻ってきた。
その両手にペットボトルを持って。
「ごめん、適当に買ったから好きか分かんないけど。」
「いえ、ありがとうございます。これ、大好きです。いただきます。」
菅原先輩が渡してくれた乳酸菌飲料のペットボトルを受け取る。
先輩に気を遣ったわけではなく、すっきりした甘さのこの飲み物が、私は本当に好きだった。
早速いただくと、口の中いっぱいに冷たい甘さが広がった。
「おいしい…」
「良かった、何か好きそうだなと思ったんだ。」
そう言って菅原先輩は私の隣に腰を下ろした。
そして、自分もペットボトルのフタを開けて一口あおる。
「菜月は甘いのが好き?」
「はい、そうですね。」
「やっぱり。女の子って感じだな。俺はさ、辛いのが好きなんだけど、自販機とかには激辛とかそういうの、やっぱあんまないね。」
「激辛?!」
先輩の言葉に驚いて思わず大きな声が出る。
激辛とか、何だかあまり先輩のイメージではない。
「そう。俺の好物、激辛麻婆豆腐。」
いつもの爽やかな笑顔でそう言う。
「何か意外ですね…」
「あー、よく言われる。」
「じゃあ、辛さ調整できるカレー屋さんとか、すごい辛いの頼むんですか?」
「頼む頼む。今度一緒に食ってみる?うまいぞー!前大地たちとも食いにいった。」
「えー!私は絶対無理です…!」
その後も、お互いの好きなものや最近あったことなどを話した。
いつも一緒に帰っているから菅原先輩とはたくさん話しているはずなのに、それでも話題は尽きない。
気が付けば、私は笑顔になっていた。