第1章 出会い
-帰り道-
「まだまだ暗くなるのも早いし、夜は冷えるよなー」
まだ慣れない駅までの道を、菅原先輩と並んで歩く。
「そうですね、私、寒いの苦手なんで早くあったかくなってほしいです。」
菅原先輩は、こちらが気詰まりにならないようにか、ずっと話しかけてきてくれている。
気のせいか、歩幅も合わせてくれているような…
「今日の練習、見てどうだった?」
「はい、すごい感動しました!やっぱり生は違うなあって!」
「生??」
「あ、私、バレー観戦好きなのでテレビではよく見てるんですけど、実際に観にいったことはなくて。」
「あー、そういやさっき日向がバレー好きだって言うから連れてきたって言ってたもんな!」
「菅原先輩はセッターなんですよね。」
「うん、そうだよ。」
「セッターって難しいポジションですよね…尊敬します!」
「そんな、尊敬されるほどのものじゃないよ俺なんて」
「菅原先輩って皆のことよく見てて、声かけも丁寧にしてますよね。アタッカーの人も先輩のトスなら気持よく打てそう」
「………」
「…先輩?」
先程まで笑顔で話していたと思った菅原先輩が黙って俯いてしまった。
何かいけないことを言ってしまっただろうか。
「あ、いや、なんでもない。」
「ごめんなさい、何か気に触ること…」
「大丈夫、水沢さんが気にすることじゃないよ。 」
そう言って菅原先輩はにっこり笑う。
あ…またあの笑顔だ…
「菅原先輩って…」
「ん?」
「笑顔がとっても素敵ですね。」
「え………//」
数秒フリーズした菅原先輩は、その後すぐに口元を手で隠して俯いた。