第3章 合宿
何となく。
確かにそう聞こえた。
何となくって何だ。
キスって付き合ってもない人同士が、何となくするものなのか。
「なに、それ…。」
「いや、聞けよ。俺は…」
「いいよ、もう分かった。」
鼻の奥がツンとして、視界が滲みだす。
影山くんに見られたくなくて、その場を離れた。
後ろから影山くんが私の名前を呼ぶ声が聞こえたけど、振り返ることはできなかった。
ファーストキスだった。
『私の初めては影山くん』
キスにおいての初めてが、あの言葉通りになるとは思ってもみなかった。
このままお風呂に行く気にはなれず、とぼとぼと自分の部屋へと引き返す。
誰にも会わなければいいなと思っていたのに、途中で菅原先輩に出くわした。