第3章 合宿
「菜月ちゃん、おかえり。あれ……」
体育館の入口から顔を出した清水先輩が、私の隣の黒尾さんを見て驚いている。
「私、帰り道やっぱり自信なくて。たまたま黒尾さんと外で会ったので一緒に来てもらっちゃいました。」
「そうだったんだ。」
納得したように頷く清水先輩の後ろで、部員たちがちらちらとこちらを窺っているのがわかった。
皆、黒尾さんのことが気になるんだろう。
そうこうしているうちに、先に到着していたらしい音駒高校の他のメンバーたちもやってきて、黒尾さんはチームメイトとやっと合流できた。
「…クロ、遅かったね。」
「研磨ー!お前を探しに行ってたんだろーが!」
明日の練習試合の相手なのだけど、私はすっかり黒尾さんに気を許してしまい、何だか敵とは思えなくなっていた。
迷子になっていたらしい部員とじゃれる様子を見て、つい笑ってしまう。
「よし。じゃあ俺らも練習に参加させてもらうことにしますかね。」
黒尾さんがそう言うと、音駒のメンバーは練習の準備を始めるべく、まずは自分たちの部屋に向かっていった。
去り際に黒尾さんは、また後でな。と私にニヤリと笑ったのだった。