第3章 合宿
振り向くと、そこには黒髪の赤いジャージをまとった背の高い男の人が立っていた。
月島くんぐらいあるんじゃないか。
そのくらい、身長が高い。
「烏野の子なんだよな?」
私のジャージの背の文字を確認したのか、彼は言う。
頷くと、ホッとしたような表情を見せる。
「俺ら、明日の練習試合の相手なんだけどさ。今日からおたくと同じ合宿所に入るんだが、今部員が一人行方不明でよ。見なかったか?こう、プリン頭の脱力系で…」
彼の話を聞いて、理解した。
音駒高校の人か!
部員が行方不明なんて心配だけど、特にそういう人は見ていない。
首をふろうとしたところで、彼の携帯が鳴った。
私に一言ことわってから、電話に出る。
「おう俺だ。……何ぃ?!……ああ、分かった。俺もすぐ行く。」
通話時間は10秒もなかったかもしれない。
電話を切った彼は、再び私に視線を向けた。
「悪い、見つかったらしい。」
「あ、良かったですね!」
「他の部員が見つけて、もう全員で合宿所に着いたらしい。何で探しに行った俺が取り残されてんだか…」
彼はそう言って肩をすくめた。
「そういう訳だから、合宿所まで一緒に行こうや。もう戻るんだろ?」
「はい…ただ、スムーズに戻れるかはお約束できないですけど」
それを聞いて、彼は不思議そうな顔をする。
「いや、方向音痴なもので…」
私は彼に地図が表示された携帯の画面を見せた。
それを見て、彼は笑う。
「この距離で地図ってまじかよ。」