第3章 合宿
救急セットの中身が心もとないということで、私は合宿所を出て、近くのドラッグストアに向かっていた。
清水先輩によれば、近いからすぐ分かると思うとのことだったけれど…。
生憎私は方向音痴なのであった。
だから、携帯を後生大事に握りしめ、大げさだけど、戻ってこられますように…と祈りながら合宿所を出た。
何とかドラッグストアに着き、目的のものを手に入れて、さあ帰ろうと帰り道と対峙する。
普通の人にはおよそ分からない感覚かもしれないけれど、方向音痴の人間には先程までたどってきた道と同じ道でも、戻る道はまるで別物に見える。
私が重度なだけかもしれないけど、少なくとも私個人はそうだ。
進行方向が違うから、見える景色も違うので焦ってしまう。
そして結局曲がり角で混乱し、行ったり来たりを繰り返してしまうのだ。
でも、私には今は携帯がある!
そう思い、携帯のGPS機能で地図に刺さった赤いピンの位置を確認した。
こっち、だよね…。
歩き出そうとした時、後ろから声をかけられた。
「なあ、君!」