第3章 合宿
「影山くんはやっぱり背伸ばすために飲んでるの?」
「まあな。バレーやってんだから高さあって困ることはないだろ。」
「おおー…!」
「なんだよ…?」
「いや、普段飲むものとかのことまでバレーを基準に考えてるって、何か影山くんらしいなって思って。」
そこまで熱中して頑張れるもの、自分にはこれ、というものがあること。
私にはそれがいつも眩しく見える。
なのに、影山くんからは正反対の言葉が返ってきた。
「バカらしいとか思ってんのかよ?」
「ええ?!思うわけ無いじゃん、その逆だよ!」
私の勢いに驚いた様子の影山くん。
でも、無視して続ける。
「それだけ頑張れるってひとつの才能だよ。すごい尊敬してる。私にはそういう打ち込めるもの、まだないから。」
そう言うと、影山くんは遠慮がちに口を開いた。
「…俺は、お前のほうがすごいと思うけどな。」
「え?」
「取り組むこと全部に全力投球してるだろ。俺はバレー以外のことは適当だし…そういうことなんじゃねえの。」
「影山くんは0か100か、みたいな?」
影山くんはこくんと頷いた。
「菜月が俺達のことを頑張ってるって思うのと同じように俺もお前は頑張ってると思ってる。」
そう言ったあと、ハッとした様子の影山くんは目に見えて顔を赤くした。
あまり人を褒めたりすることがないからだろうか。
「ありがとう。」
お礼を言ってから、私は影山くんにもらった牛乳にストローを通した。
「これ、いただきます。」
「…おう。」