第3章 合宿
今日の練習も無事に終了し、後は食事と入浴のみとなった。
今日は食事の方は清水先輩にお任せして、私は皆が入る前にお風呂場を掃除するために、一人そちらへ向かっていた。
簡単に掃除を済ませ、最後にシャワーで辺りの泡を流す。
さあ、おしまい。
そう思ったとき、手が滑ってシャワーを落としてしまった。
床に落ちたシャワーヘッドは、獲物を見つけたように私の方を向き、容赦なく水をかけてくる。
「うわっ…やっちゃった…」
急いで蛇口をひねってシャワーを止めるも、時すでに遅し。
私のシャツはびっしょりになっていた。
こんなことになるなんて思ってもいないから着替えは部屋だし、食堂に行く前に一旦部屋に戻るしかないな。
そう思って、シャツの裾を固く絞ってから浴室を出た。
自分の部屋へと急いでいると、ちょうど食堂へ向かうところなのだろう、菅原先輩が前からやってくる。
私に気付き、最初は笑顔を向けてくれたものの、近付くにつれてその顔は赤く染まり、最後には目をそらされてしまった。
「ちょ、ちょっと…こっち来な、菜月。」
目をそらしたまま、先輩は私を手招きする。
私は素直に従って、菅原先輩の前まで歩を進めた。
それを確認すると、菅原先輩は自分の着ていたジャージの上着を抜いで、私の肩にかけてくれた。
背中に手を回して上着をかけてくれたので、一瞬、抱きしめられたような錯覚に陥る。
菅原先輩は丁寧に前のファスナーまで上げてくれた。
きっちり一番上まで。