第3章 合宿
朝食後、練習が始まった。
ボール拾いやボール出しなどを手伝っていると、いつぞやのように流れ玉が私めがけて飛んできた。
今回は、きちんと気をつけていたから大丈夫。
ちゃんと避けられる。
でも、まっすぐ飛んでくるボールを見て、突然思いつく。
これ、レシーブできたりしないかな。
入部してから皆の練習している様子を毎日見ていて、昔より断然バレーボールに近づいた気がしていた。
だから、自分にもひょっとしたら出来るんじゃないか、みたいな好奇心にも似た気持ちが芽生えてきていたのだ。
見様見真似でレシーブの体勢を取る。
しかしボールは私に到達する直前、私の前に滑り込んできた大地さんによって綺麗にレシーブされた。
「お前、何やってんの。」
体勢を元に戻した大地さんに軽く頭をコツンとされた。
「バレー未経験なんだろ?いきなりあんなスパイクレシーブしたりしたら腕痛めるぞ。」
「ご、ごめんなさい…何か、急にやってみたくなって。」
私の言葉を聞いた大地さんは、最初は驚いていた様子だったけど、すぐに笑顔を取り戻した。
「お前意外と度胸あるな。」
「え?」
「バレー未経験なのに見様見真似で、ワンタッチあったから勢いは若干弱まってたけどスパイク拾おうとするなんてさ。しかも旭のスパイクだぞ。」
「えへへ、そんな…」
「まあでも、ケガしたら困るし、ほどほどにしとけよ。もしレシーブ練習してみたいなら俺が後で教えてやるから、それまで我慢しなさい。」
そう言って、大地さんは私の髪をくしゃっとした。
そして、コートへと戻っていく。
私は触れられた髪に手をやりながら、コートに戻った大地さんの綺麗なレシーブを、しばらく眺めていた。