第3章 合宿
「菜月……好きだ。」
布団にゆっくりと押し倒される。
私の体の上には大地さんが覆いかぶさり、その体で部屋の豆電球の淡い光は遮られた。
そのせいで、表情がよく見えない。
ちょっと待ってと声を出そうとするけれど、何故か声が出てこない。
焦っていると、額にキスが落ちてきた。
一瞬で体が固まった。
どうしよう、どうしよう、この状況。
シャツの裾が捲られる気配があった。
地肌に直接触れられてくすぐったい。
大地さんの顔が近付き、唇と唇が触れようとした瞬間。
毎朝聞き慣れた電子音が響いた。
私は飛び起きて携帯のアラームを止める。
な……なんて夢見てるの私!!!!
昨日の夜、確かに部屋の前まで大地さんに送ってはもらった。
けど、当たり前だけど大地さんは部屋には入っていないし、夢に見たような状況になんてなっていない。
ただ、少しからかわれただけだ。
なのに……。
本当にえろいのは、友達じゃなく自分なのかもしれないとため息をついて肩を落とす。
あんな夢を見てしまって、大地さんにも申し訳なかった。
朝から変な夢を見たので疲れを感じてしまう。
朝食も、あまり喉を通らなかった。
「菜月、どうした?大丈夫かー?」
心配して声をかけてきてくれた菅原先輩に返事をしようと顔を上げると、先輩の隣には大地さんがいた。
おはよう、と笑って挨拶してくる。
「お、おはようございます!ごめんなさい!!!」
大地さんを見た瞬間、私は今朝の夢で大地さんに触られた感触までをも鮮明に思い出し、恥ずかしさと申し訳なさがあふれた。
大地さんに謝って、急いで食堂を後にする。
取り残された二人は、今きっと呆然としているだろう。
「な、なんだ今の…?」
「さあ…。」