第1章 入れ替わるメイドの事情
ランチの時間になり、慌ただしく給仕が始まる
「今日は花が飾ってありますね」
「はい、樹里奈が持ってきたので・・・」
「樹里奈が?」
「はい・・・源に摘んでもらったそうです」
「源に?」
「はい」
「ほぉ・・・」
黒刃はふむ・・・と少し考えると樹里奈を伺う
仕事もテキパキとこなし、屋敷の使用人たちともうまくやっているようだ
昼食が終わると樹里奈を呼び出した
「いかがですか、この屋敷の仕事は?慣れましたか?」
「はい、みなさんよくしていただいているので・・・」
「そうですか・・・来週で研修期間が終わりますね」
「はい」
「期待していますよ?」
「黒刃」
「はい、理人様」
「樹里奈にプレッシャーを与えるのはやめろ」
「わたくしは別に・・・」
「いいんだ、樹里奈。もう戻れ」
「は、はい。失礼します」
樹里奈が部屋から出て行くと黒刃が大きなため息をつく
「あいつも同じだ。何も期待するな」
「・・・御意」
・・・・・____________
樹里奈は困惑していた
なぜこんなにいいお屋敷なのにみんなやめてしまうのか?
もしかしたら試用期間が終わったら、急に仕事が増えるとか?
みんな急に冷たくなったりするとか?
う~ん・・・と考えてみるけど答えは見つからなかった。
「ねえ、梅さん・・・」
洗濯し終わったタオルを畳みながら樹里奈が尋ねる
「なぁに?」
「なんで今まできたメイドさんはやめちゃったんですか?」
「・・・」
「だってみんなこんなにいい人たちなのに・・・」
「・・・」
「梅さん?」
「あ、えぇっと、そうね・・・なぜかしらね・・・」
「私、色々考えてみたんですけどわからなくって・・・」
「・・・明日で試用期間もおしまいね」
「はい」
「樹里奈ちゃんがいなくなったら、寂しくなるわ・・・」
「梅さん?」
「いえ、私ったらやぁね、これじゃあ樹里奈ちゃんが辞めちゃうみたいよね」
「梅さん、私・・・」
「この屋敷には暗黙のルールがあるの・・・
それは試用期間が終わればわかる・・・
それを受け入れるか受け入れないかは樹里奈ちゃん次第なの・・・」