第1章 入れ替わるメイドの事情
「そっか・・」
源は少し嬉しそうに微笑むとタルトを一口で食べる
「あーっ」
「あ?なんだよ?お前も食べたかったのか?」
「そ、そうじゃなくてせっかく庵くんが作ったからもっと味わって食べてほしかったの」
「そうかよ」
「それに・・・」
「それに?」
「そんなに慌てて食べたら休憩にならないでしょ?」
「別に休憩しなくったてかまわねぇよ」
「だぁめっ!ほら、ここ座って」
源を樹里奈の隣に座らせると源の肩を揉み始める
「お、おい・・・・」
「わっ・・・やっぱりすごく凝ってるよ」
「手ぇ、汚れるぞ」
「大丈夫だよ」
「服だって汚れる・・・」
「汚れたら洗えばいいだけでしょ」
「そっか・・」
「うん」
「はぁ~・・うめぇ」
源は紅茶をしみじみと飲み干す
「疲れ取れた?」
「おー、昼寝したくなってきた」
「もうっ、じゃあまたお昼ご飯の時にね」
「あ、おい」
「ん?なぁに?」
「いや・・・慌ててこけるなよ」
「うん?わかった」
樹里奈はバスケットを抱えてパタパタと屋敷へと戻っていった。
その姿が見えなくなるまで源はじっと見つめていた
「・・・あいつ、屋敷に残るかな・・・」
その様子を窓から理人が見ていたのを誰も知らない・・・