第1章 入れ替わるメイドの事情
私のメイド生活は特になんの問題もなく過ぎて行く
梅さんに最初の頃はさすがに怒られたりもしたけれど、二週間たった頃には、怒られることもなくなっていた
「梅さ~ん、こっちのお掃除終わりましたよ」
「あら、早いわね」
「あ、それ庭に運ぶやつですよね?私持っていきます」
「悪いわね、じゃあそれが終わったら休憩にしましょ」
「はい。あ、今日はコックの庵くんが新作デザートを作ってくれるみたいですよ」
「あら、楽しみね」
樹里奈は梅から受け取った荷物を庭に運ぶ
「あれ、樹里奈どこいくの?もうすぐデザート出来上がるよー」
廊下をすれ違った庵が樹里奈に声を掛ける
庵は優しい笑顔の草食系男子。愛想のいい庵と違って同じくコックで双子の要は不愛想だった。
「あ、これ庭に運んだらすぐ行きまーす」
「おお、待ってるぞ~」
「はーい」
「梅さん、今度入った子は良い子だね~」
「そうね、よく働いてくれるし、ずるい事はしないし・・」
「続いてくれるといいんだけどなー」
「そうねぇ」
2人はため息をつきながら樹里奈の後姿を見送るのだった
「さて・・・と」
樹里奈はキョロキョロと庭を見回して、庭師の源を探す
源はバラ園の水やりをしていた
「あ、源さ~んっ」
「おお、樹里奈」
源は樹里奈より年上で体型はガッシリとして筋肉むきむきの肉食系男子だ。
「梅さんに頼まれた荷物ここ、置いといていいですか~?」
「ああ、おい、花持ってくか?」
「うんっ、持ってく」
源は樹里奈に薔薇とその他を適当に積んで花束にしてやる
「わっ・・これ今日のランチに飾ったら食卓が華やぐね」
「そうだな」
「ありがとう、源さんっ」
「おお」
「あ、今日のおやつは庵君の新作デザートだよ~」
「俺は甘い物は・・・」
「でも甘い物は体の疲れをとるんだよー、源さん、いっつも力仕事してるからちゃんと休まなきゃ駄目だよ?」
「わーったよ、ったく」
「じゃね、後でね~」
ひらひらと源に手を振って花束を抱えて屋敷へと戻る