第2章 暗黙のルール
「なんでみんなここのメイドさん辞めちゃったのかなぁ?」
樹里奈が独り言のように呟く
庵も要もギクリと肩を揺らし、樹里奈から目を逸らす
「庵くん?」
「今までのメイドで試用期間が終わった後、ここで朝食を食べた奴はいない」
「え?そうなの?」
「その理由はわかってんだろ?」
「あ・・・・っ」
「それに今までの奴はお前と違ったし・・・その・・」
「で、でも・・・私あれでここを辞めようとは思わなかったよ?
だってそれ以上にここの人達が大好きだもの」
「・・・お前みたいにここの溶け込んだ奴はいなかったよ」
「そうなの?」
「ああ、源にしろ、要にしろ今までのメイドとは言葉も交わした事がねぇんじゃねぇか?」
「ん~・・・そりゃあ二人とも無口な方だとは思うけど、優しいし・・・」
「要が?優しい?!」
「え?うん・・・だって私が困ってるとさりげなく助けてくれるし・・・」
「へぇ・・・樹里奈は特別って訳か?」
庵がボソリと呟く
「大体源には近づくメイドさえいなかったよ、いつも汚れてんだろ?」
「それは庭仕事いつも一生懸命してるからだよ!それなのに私には汚れないように気遣ってくれたり・・・」
「へぇ~・・・」
「庵くん?」
「こりゃ、俺も負けてらんねぇな」
「何に?」
「こっちの事っ!」
「庵くんはいっつも優しいよね!美味しいおやつも作ってくれるし・・・私大好き!」
「なるほど・・・俺はおやつで釣るか・・・」
ブツブツと呟く庵に樹里奈は首を傾げる
「ご馳走様っ。」
樹里奈は食べたものを片づける為に要のいるキッチンへと向かう
「要さん、ご馳走様でした」
「ああ」
食器を洗おうとするとその手を樹里奈の背後から優しく包む
「俺がやっとく」
「要さん・・、あの・・でも・・・」
「お前は他にも仕事があんだろ?」
「ぁ・・、えと、はい」
「おい!要っ!!おめぇは肉食獣かっ!」
庵が要を樹里奈から引き離す
「・・・まだ駄目なんだよ、わかってんだろ?」
「・・ああ」
2人の訳の分からない会話に樹里奈は?を浮かべる
「おい、樹里奈、さっさとご主人様の元へ行け」
「あ、はい。」
樹里奈は首を傾げながらもご主人様の元へ向かうのだった。