第2章 名探偵の好きな人
「災難だったわね沙羅!」
ケラケラと笑いながら声をかけてきたのは、友人の鈴木園子。
鈴木財閥のとこの娘さんなんだけど、お嬢様って感じが全くしなく、さっぱりした性格ですごく付き合い易い。
隣には蘭ちゃん。
二人は幼馴染で、物凄く仲がいい。
信頼し合ってるって感じ。
いいなぁ、そういうの。
「マジ勘弁なんだけど。なんでこんなに課題出されたの?しかも私だけ」
「そりゃ、前回の復習箇所を”こんな難しい問題わかるわけがないじゃないですか”、なんて答えたら先生もそうしたくなるわ」
「そんなエコヒイキはいらないです…」
出された課題も難し過ぎてわけわからん。
数字見るだけで吐きそうだ。
……ていうかマジで気持ち悪くなってきた。
「…ごめん。なんか急にお腹の調子が…」
「数学嫌いが体調に出たのかしら」
「大丈夫?沙羅ちゃん」
茶化すのが園子、すぐに背中をさすって心配してくれるのが蘭ちゃん。
あなたは天使か。
「え、マジなの?変な物でも食べた?」
園子の言葉でひとつ思い当たる。
「あぁ…そういやほろ苦い固いクッキーを頑張って完食したわ」
さっきの調理実習でね。
残すなよって先生の顔に書いてあったからね。
普通こういうのって持ち帰りOKじゃないの?
って思いながら頑張って食べたツケが今になってくるとは。
「保健室行った方がいいんじゃない?」
「う〜…そうだね。行ってくるわ」
「私一緒に行くよ」
すかさず付き添いを申し出てくれたのは、やはり蘭ちゃんだ。
優しいなぁ、ホント。
「ありがとう蘭ちゃん。でも大丈夫」
途中御手洗行きたくなったりしたら…ねぇ?
気になっちゃうじゃん?色々とさ。
見えなくなるまでずっと心配してくれた蘭ちゃんに手を振りながら
一人で保健室に行って、ベッドに横になる。
あーあ。
蘭ちゃんてなんであんなにいい子なんだろ。
蘭ちゃんが鼻に付くような嫌な女の子だったらなぁ。
そうしたら
「蘭ちゃんよりも私の方が新一に相応しい」
とか
平凡な私でも、自信を持つことだって出来たかもしれないのに。
そんなこと考えている私の方が
よっぽど嫌な女の子だね…