第2章 名探偵の好きな人
新一(見た目は小学生)と二人きりの空間。
話してることは馬鹿なことばっかりなのに、幸せすぎて溶けそうだ。
あぁ、私ってお手軽な女。
と、そこへ。
「沙羅ちゃん、大丈夫?」
恋のライバル登場。
いや、もはやライバルとかいうレベルとかでもないってわかってるよ。
ライバルって
同等もしくはそれ以上の実力を持つ競争相手の意味。
だからね?ちゃんとググったんだから。
蘭ちゃんと同等になんかなれない。
”それ以上”すぎて、相手にもされないよ。
「あら、コナンくん?どうしてここにいるの?」
「ら、蘭ねーちゃん…」
明らかに焦る新一。
声も急に高くなってお子様コナンくんバージョンだ。
「いつ高校に遊びに来たの?もー駄目じゃない勝手なことして。ごめんね沙羅ちゃん、起こしちゃって…。ほら、コナンくん帰りましょう。沙羅ちゃん具合が悪いんだから」
「あ、で、でも…」
そう言って蘭ちゃんは、私を申し訳なさそうな顔で見つめるコナンくんの手を引いていく。
……お願いだから
私から、新一との時間まで奪わないで。
「蘭ちゃん!」
思った以上の大きな声が出て、目を丸くする二人以上に自分でもビックリした。
「コナンくんは私が呼んだの。会ったばっかりだけど、私コナンくんのことすっごい気に入っちゃってさ。さっきまでかなり気分悪かったけど、コナンくんが話し相手になってくれたおかげでだいぶ楽になったんだ。だからもう少しだけ、コナンくんと二人で話がしたいなぁ、なんて」
そう早口でまくし立てて、お願い、なんて手を合わせてみる。
もちろん、笑顔は忘れない。
私は別に、蘭ちゃんに嫌な思いをさせたいわけじゃないから。
「……そう?沙羅ちゃんがそう言うなら…。コナンくん、あまり遅くならないように帰ってくるのよ。沙羅ちゃんに迷惑かけちゃ駄目よ」
「…は〜い…」
そんな二人のやり取りに、まるで夫婦みたいな会話だなぁなんて、軽い嫉妬を覚えてしまう。
わかってる。
どんなことをしたって、私が蘭ちゃんの立場に立てないことくらい。
わかっているのに
彼を諦められない、私が悪いの。