第2章 名探偵の好きな人
可愛くて、優しくて、空手も強くて、頭も良くて
しまいにはお菓子作りも上手なの。
何この完璧な人。
もちろん、私のことではない。
友人の毛利蘭ちゃんである。
名探偵に恋をして 02
蘭ちゃんが家庭科の実習で作ったクッキーはそれはそれは美味しそうで
同じように作ったはずなのになんでこんなに違うクッキーになるのか、家庭科の先生に是非とも教えてもらいたいと、固いクッキーを噛み締めながら思った。
「お菓子よくつくるの?」
って聞いたら
「新一、レモンパイが好きだから、帰ってきたら作ってやろうと思って練習してるの」
だとよ。
新婚の奥様か!
なんて突っ込みはしない。悔しいから。
照れながら喜ぶのは目に見えている。
ひとつ断っておくけど、
別に私は蘭ちゃんが嫌いなわけではない。
好きになった人の、好きな人だっただけ。
いい子だな、この子と仲良くなりたいなって思って、仲良くしてて
その後で好きな人の好きな人でしたー
ってわかったからって
いきなり嫌いにはなれないじゃん?
嫉妬とかはするけど
どっちかというと、憧れているんだろうな。
可愛くて、強くて、優しくて、何でも出来て、男女関係なく皆から好かれて
…新一からも大切にされて。
蘭ちゃんになりたかったな。
なんて、言っても無理な話だけどさ。
顔、身長、スタイル、頭の出来、全部フツー。
特技もないし料理も下手。
神様って意地悪だ。
私にもひとつくらい、魅力があってもいいのに。
天は二物を与えずとかいうけどさ。
新一とか蘭ちゃんとかどうなのよ?
二物どころじゃないよ。与え過ぎだよ。
出血大サービスだよ!
こちらはおこぼれももらえてないのにさ。
蘭ちゃんに恵んだものをひとつくらいわけてくれたっていーじゃんね。
新一の愛情を蘭ちゃんじゃなくて
私に向けてくれるくらいのサービス
してほしかったなぁ。
ねぇ、神様。
今からでも遅くないよ。
私は新一からの愛情があれば
それだけで幸せなんだから。