第1章 小さくなった名探偵
「お前はもっと口の固いやつだと思ってたよ」
おっと、コナンくんもとい新一が怒っていらっしゃる。
いや、呆れているのかな。
「だってどう見ても小さい新一じゃん?子供時代の新一を知らない私でもそう思うのに幼馴染が気付かないなんておかしくない?と思ってさ」
「…蘭には何度か疑われてるさ。その度ごまかして来たオレの身にもなってくれ」
「ふぅん…疑われてるのに一緒にいるんだ。相変わらずお熱いことで〜」
「バーロ、何言ってんだよ。そんなんじゃねーよ」
新一は否定するけどさ。
知ってるよ。
新一が蘭ちゃんのこと大好きなの。
蘭ちゃんも新一のことが大好きなの。
両思いのくせに、なかなかくっつかなくてイライラしちゃう。
「よく言うよねー。昨日だって、蘭ちゃんにコナンくんって絶対新一だよねって言っちゃうよって言ったらあっさり正体バラしたくせに。結局は蘭ちゃん第一で動いてるんでしょ、新一は」
「それは……」
ねぇ、違うって言ってよ。
なぁんて。彼の気持ちはわかってるはずなのに。
どこかで期待しちゃうのは、新一がハッキリさせないせいだよ。
「…ごめん。新一も大変なのにね。なんか知っちゃったのも何かの縁だし、何でも手伝うから遠慮しないで頼ってね」
「…悪ぃな。でも、まだバレたのがお前で良かった。沙羅とは一生の親友だな」
ねぇ、新一?
いくら子供の姿でも、それは聞きたくなかったな。
一生お友達宣言なんて、死刑宣告と同じくらい辛いよ。
蘭ちゃんのことは、友達とすら、思ったことないくせに。
「あ、でも私コナンくーんとかあんま呼びたくないから、蘭ちゃんと一緒のときはあんま会いたくないかも」
「…名前の件は突っ込むなよ」
笑顔でそう誤魔化して。
本当は、二人が一緒にいるのを見たくなかっただけなのに。
子供の姿であっても嫉妬しちゃうって、相当だな私。
「じゃぁ新一、とりあえずレストランにでも入りますか?」
「は?なんでレストランだよ?話はそこらの公園でいいだろ?」
「新幹線のお子様ランチが食べたいんでしょ?」
意地悪く笑うと、新一はお前なぁ、と怒った。
でもね。
蘭ちゃんが知らない新一を私が知っているということが、とてつもなく優位に立った気がして
少し、嬉しかったんだ。