第3章 親
仁希「よぉ怜。出かけるぞ。」
仁希は家に帰ってくるたびに怜を連れ出そうとする。
怜はいつも猿比古を誘って、3人で出かける。
仁希「今日はどこがいいんだぁ?」
怜「ひこ、何処行く?」
怜が伏見家に住み始めてしばらく経っているのもあり、猿比古の事をニックネームで呼ぶようになっていた。
猿比古「・・・怜の行きたいとこ。」
仁希「動物園は行っただろぉ・・・水族館とか遊園地も行ったな。」
遊園地に行った時はあんまり楽しくなかったなぁなんて、怜はぼんやりと考える。
怜「・・・仁希。」
仁希「んぁ?なんだ怜。」
怜「仁希、後ろの女の人達何?」
仁希の容姿は悪くない。むしろ良い方に分類される。それ故に、このような場所では目立ってしまうのが当たり前なのだ。
怜と猿比古は色違いの同じもこもこのポンチョを着ており、色違いのズボン、黒い靴下、もこもこの同じ色のブーツを履いており、周りからすれば双子に見える。怜も猿比古も5歳なので、かなり幼いが容姿は決して悪くない。そしてその双子を連れている仁希。
残念ながら、どこへ行っても目立つのだ。
仁希の容姿に目を奪われた女性たちが、仁希と話したいがためにチャンスを窺って、後ろからついてきている。
仁希「何だ怜、あんな女共に妬いてんのか?」
ケタケタと笑う仁希。
怜「・・・仁希、お兄さん?」
仁希「あ?あー・・・。」
後ろからたまに聞こえてくる会話。
あの人、あの子達のお父さんだったりしないかな?
え、あんなに若いのにお父さんなの?
お兄ちゃんの間違いじゃない?
だよねぇー。あんなにチャラいお父さん見た事ないや。
仁希「おサルの父親はいちお、俺だけど?」
怜「・・・じゃあ、いい。」
怜は猿比古と仁希の手を取ると、吹っ切れたかのように堂々と遊園地の中を歩き回った。
当然、それで野次馬が消える事はなく、むしろ増えてしまったが。