第14章 遭遇
家に戻ってしばらくすると、端末が光った。
送り主は猿比古。
To:怜
From:ひこ
No title
仕事終わった。今からそっち行ってもいいか?
怜はいいよ、という返事を返してベッドに埋もれる。
ぬいぐるみを抱えて怜は沈む。
あの人、真っ先に死ぬだろうな。
そう思いながら思い浮かぶ顔。十束多々良。
どうしてそう思ったのかなんて、何となくだから何とも言えないけれど、でも、そう思った。
きっと彼はいつもの同じ調子なのだろう。同じテンションで同じ笑顔で、異なる多くの人々に接するのだろう。悪人だろうと、善人だろうと、偽善者だろうと、正直者だろうと、誰にでも等しく接するのだろう。
それは無駄な事だとは思わない。阿呆な事だとは思わない。
けれど、それは私には出来ないだろうと思った。
私の世界は、ひこがいれば成り立ってしまう世界。
ひこがいなければ崩壊する世界。
ひこは特別で、他はそうじゃない。全員に等しくなんて無理だ。
怜「・・・ひこ、好き。」
ぎゅうっと人形を抱きしめて、目を閉じた。
早くひこがこないかなぁ。