第2章 家
怜が泣き止むと、猿比古は怜をじっと見る。
猿比古「・・・右目、見えるのか?」
怜は今、前髪で右目を隠している。
怜「あ、うん・・・。見えてるよ。」
猿比古「・・・そうか。」
怜「・・あの、伏見k」
猿比古「名前でいい。」
怜「・・・猿比古、くん。」
猿比古「・・・あぁ。」
怜「・・私、迷惑しかかけてないし、その・・。」
猿比古「迷惑じゃない。」
そうキッパリと断言されてしまい、怜はその続きを言えなかった。
猿比古「苗字がないなら、伏見にすればいい。」
怜「・・・え・・?」
猿比古「・・・うちは親がろくでもないから、うるさいけど。」
怜「・・・でも、私、」
猿比古「追い出したり、閉じ込めたりもしねぇ。」
まるで、心を見たかのような、欲しい言葉だけをくれる少年。
猿比古「お前がいたいだけ、いればいい。」
そう言われてしまって、断れる子供が何処にいるだろうか。
怜はそれを聞いて、再び目に涙を浮かべた。
涙を流す事はなかったが、笑って言った。
怜「ありがとう、猿比古くん。」
少年は、初めて少女が笑うところを見たのだ。