第12章 親子
母「・・・怜。ごめんなさい、あの時、気付いてあげられなくて・・・。」
それは、伏見に出会う前の事を示していた。
あの時、母はウサギの能力で記憶を失っていたはず。
母「・・・時間が経つにつれてね、記憶が混ざって来たの。貴女のいた頃の記憶、貴女を連れていかれた後の記憶。・・やっと、整理が出来たの。」
父「すまなかった、怜。お前を守り切れなくて。」
怜「・・・ううん・・そんな事ない・・。だって、二人とも、来てくれた・・・。」
涙をぐっとこらえる怜。
母「怜、今度こそ、家に一緒に帰りましょう?」
父「怜、今度こそお前を手放さない。」
怜「・・・お父さん、お母さん。私の家はね、もうそこじゃないの。」
その言葉に誰よりも驚いたのは伏見だった。
初めて怜に会った時の事を、忘れられない。
親を探し求めて、雨の中ずぶ濡れになっていた怜。
一度帰ると言った怜。
だから、てっきり実家に帰るものだとばかりに思っていた。
怜「私の今の家はね、セプター4にある1部屋なの。そこで待ってたら、絶対にひこが帰って来る。ひこが帰って来る家が、私の家なの。だから、お父さんとお母さんのいる家には、帰れない。」
にっこりと笑ってそう告げる怜。
怜「ひこと、一緒がいいの。」
怜は小さいまま、伏見の腕にしがみつく。
きらりと揺れた怜の右耳のイヤリング。
母「!・・・怜、ひこくんの事好きなの?」
怜「・・・ひこと一緒。約束した。」
怜をジッと見ると、母親は嬉しそうに笑った。
母親「貴方!怜が婚約の約束をしたんですって!!」
父親「何っ!?すぐに報告しなくては!!」
伏見「・・・は?」