第11章 捜索
怜は自分を抱き上げている十束多々良を見ていた。
細いボディーライン、上がっている息。きっと自分は足手まといになっている。走るスピードも落ちている。
後ろの連中と、距離が少しずつ近づいている。
そんな時、十束は廃ビルに滑り込んだ。
このビルで、仲間を待つのだろう。
案の定、怜は廃ビルの中で降ろされた。
十束「ごめんね、すぐ仲間が来てくれると思うから。もうちょっとだけ、待ってて?そうしたら、送っていくから。」
端末をいじり、メールを送信する十束。
が、少し遅かったようだ。
怜はすくりと立ち上がり、入り口を見つめる。
十束「?どうしたの??」
バァンッと蹴り開けられる扉。
そこにいたのは先程から追いかけてきている男の集団。
「もう逃がさねぇぜ?」
ヤバイ。
十束はそう直感した。自分だけならまだしも、ここには見ず知らずの少女がいる。この少女に手を出されない為には・・・。
十束が前に歩きだそうとした時だった。
怜「こんな廃ビルの高いとこ、こんなに大勢できたらどうなると思う?」
少女がそう呟いた途端、男達のいた床が崩れ落ちた。
ひびが十束たちの足元にまでやってきて、ガラガラと崩れていく。
が、二人のいる床は何とか持ち堪えた。
十束はぼうっとしてしまった。
危機一髪だったというのに、何故か不安などはなかった。
まるで、“こうなるべくしてなった”ように感じた。
十束は少女を見る。
少女は自分の右隣に立ち、大きな人形を抱えている。
見た事、聞いたことのあるブランドの服を着ているあたり、この辺の子ではないことがわかる。もしかして、どこかの御曹司なのではないか?
十束「助かった・・・のかな。ごめんね、巻き込んじゃって。」
少女はフードを被っていて顔色を窺うことは出来ない。
十束「おれ、十束多々良って言うんだ。君の名前は?」
少女が口を開いた時、
「十束さーーんっ!どこっすかーーー!?」
と、自分を呼ぶ声が聞こえた。