第9章 子供
数分走ると、見えてきた施設跡。
伏見はアンナを下ろす。
伏見「怜・・・!」
施設に入ると、何かがぶつかる。
下を見れば、瓦礫の欠片。
投げられたとわかり、投げられた方を見る。
アンナ「・・・怜・・!」
一糸纏わぬ姿の怜が、そこにはいた。
昔から何も変わっていない、小さな少女。銀髪は少し伸びて、立っていても髪が地面についてしまっている。
ちらりと覗く耳には、あの時のイヤリング。
怜だ。
伏見はアンナがいる事も忘れ、怜に駆け寄り、抱きしめる。
伏見「怜・・・っ!!」
虚ろで何も見ていなかった目が、伏見を見る。
怜「ひこ・・・?」
伏見「遅くなって悪かった。」
怜はポロポロと涙をこぼす。
怜「ひこぉ・・・!」
怜もまた、伏見に抱きつく。
ボロボロに泣きながら、怜は伏見の存在を確かめるように強く抱きつく。
伏見も何も言わない。
アンナはその様子を見て、幸せそうに笑っていた。
伏見を襲っていた頭痛は、いつの間にか消えていた。