第8章 紅
怜「コレとーコレとコレ!」
アンナの服を上機嫌に選ぶ怜。
アンナも自分の好きな赤の服で嬉しそうである。
怜「アンナにきっと似合うよー。」
これで5着目。怜の肩には買ったアンナの服がかかっている。
空を見上げれば、陽はもう沈み始めていた。
怜「んー・・・もう時間かなぁ。」
アンナ「・・・返らなきゃいけない?」
怜「うん、そうだね。」
アンナは少し寂しそうに顔を俯かせる。
怜「大丈夫だよ、アンナ。」
アンナ「・・・?」
怜「今まで、耐えて来た。アンナは、逃げなかった。だから、アンナはこれから幸せになれる。赤い人に会える。アンナは、大丈夫。」
そう言って笑う怜は、どこか遠くに感じた。
施設に戻れば、入口に迎えが来ていた。
「怜様、また逃げ出したそうですね。」
怜「言っておいて。アンナは紅が好きなんだって。」
「かしこまりました。伝えておきます。」
アンナは不安げに怜を見る。
怜「大丈夫。アンナは、大丈夫。」
そう怜に言ってもらうだけで、アンナは本当にそうなるのではないかと信じれた。