第2章 家
少女は走った。
ただひたすらに、自分の記憶だけを頼りに走った。
懐かしい風景とともに失いかけていた記憶。
懐かしい公園は変わらずに存在する。
あぁ、2年と少しでは何も変わらないのだなと教えてくれた。
2年前まで暮らしていた家に辿り着いた頃には、飛び出してから半日が経っていた。
インターホンを押したらいいものやら、普通に家に入ったらいいのやら、どうしたらいいのか分からなくなっていた所にこちらに向かってくる足音。
パッとそちらを振り向けば、懐かしい姿。
怜「・・・お、かあさん・・。」
2年前より、少し痩せた母がそこに立っていた。
怜「お母さん!」
少女に気付いた女性は、少女を見る。
女性「・・・貴女・・。」
怜「あのね、私ね!」
喋ろうとする少女の前にしゃがみ込み、笑いかける女性。
女性「貴女、迷子?」
怜「・・・え・・?」
女性「お母さんは?お父さんはどうしたの??どこではぐれちゃったか分かる?」
怜「・・・何、言って・・・。」
女性「ここら辺、最近治安が悪いみたいだから・・・警察に一緒に行った方がいいのかしら・・?」
真剣な眼差しでこちらを見る女性。
悟りたくない。わかりたくない。
けど、少女は理解してしまった。
あぁ、私の事は忘れられてしまったのだ。