第5章 誕生日
仁希が男の人を追い払い、怜達に合わせてしゃがみこむ。
仁希「マフラーから顔出せ。」
そう言われて、怜は大人しくマフラーを解くが、猿比古はそっぽを向いたまま動かない。
仁希「おサルは機嫌わりぃなー。」
なんてケタケタ笑いながら、猿比古自身の事は知ったこっちゃないといった風にグイッとマフラーを引っ張り、顔を出させる。
猿比古「いっ!?」
そして、耳にはめられた冷たい何か。
思わず猿比古は声をあげた。
仁希「ん、これでいいか。」
怜「・・・イヤリング?」
猿比古の片耳に付いているものは目立ちすぎる事のないシンプルなデザインのイヤリングの片割れ。
黒の十字架の真ん中に白い丸い石がはめ込まれている。
仁希「2つで1つな。」
そう言って仁希は怜の片耳にイヤリングの片割れを付ける。
仁希「なくすなよ?」
なんてケタケタ笑う仁希。
怜「・・・ひこと、同じ。」
嬉しそうに猿比古を見る怜。
父親に買ってもらった物だという事に少し抵抗があったが、怜と同じものを持っていると思うと、そんな気持ちは何処かへ行ってしまった。
怜「仁希、ありがと!」
猿比古「・・・あり、がと。」
一瞬驚いたように目を開いたが、すぐにいつもの調子に戻ってケタケタと笑う。
仁希「んじゃ、どっか適当に行くか。」