第5章 誕生日
今日も今日とて双子は同じ服を着ていた。
青いチェックのマフラー、黒い少し丈の長い上着、ジーンズ。靴は色違いのもこもこブーツ。
二人そろってマフラーに顔を埋めている。
怜は髪が伸びて来た事もあり、ポニーテールにしてある。
仁希「欲しいもんとかねぇのか?」
怜「んー・・・。ひこと一緒がいいなぁ。」
猿比古「・・・。」
仁希「一緒ねぇ・・・。ちょっとここで待ってろ。」
そう言うと、仁希は一人であるお店に入って行ってしまった。
二人はまだ子供で、携帯電話も所持していなかったので大人しくそこで待つ事に。
怜「ひこ、頬紅い。」
猿比古「怜も紅い。」
ふふふっと怜が笑うと、猿比古もつられて笑う。
そんな二人が目に止まったのだろう。
「ねぇ、君たち。可愛いね?」
こうやって声を掛けられる事も少なくはなかった。
声を掛けられた途端、猿比古の機嫌は一気に悪くなる。
怜「・・・おじさん、誰?」
そんな猿比古を分かっているから、怜は猿比古と手を繋ぎ、話しかけて来た人に話しかける。
「僕は、こういう所でお仕事してる人なんだけど・・・。」
そう言って差し出される名刺。芸能プロダクションのようだ。
あぁ、またか。なんて怜は心の中でポツリと呟く。
「君たち双子だよね?二人とも綺麗な顔立ちしてるし。・・・女の子の方は、髪の毛染めてるのかな?」
怜「地毛です。」
「あ、そ、そうなんだ。ごめんね。・・・それで、話なんだけど・・君たち芸能界に興味とかあったりしない?君たちならすぐに有名になれると思うんだけどn」
「知らない人に話しかけるなって、習わなかったのか?」
男の人の話を遮るように被さる声。
怜「・・・仁希。」
仁希「ちょーっと目を離した隙にコレだなぁ。つーか、子供だけで出歩くわけねぇだろ。」
少し機嫌が良さそうだと察した怜は、もう何も喋らない事にした。
猿比古は相変わらず、不機嫌ではあったが。