第30章 御柱タワー
玉依は子供4人を連れて燃え上がる施設を飛び出した。
玉依も俺達も、火傷はしてるし煙を吸ってるしですぐに手当てされた。
玉依は燃え上がる施設をずっとみていた。
時々、ごめんなさいと呟きながら玉依は泣いてた。
志摩「・・・ごめんね、玉依。皆を、守れなくて。」
玉依「志摩は悪くないわ。ごめんなさい。もっと私が気にかけていれば・・・。」
志摩「玉依、無茶はダメだよ。一人じゃ出来ないことのが多いんだから。」
玉依「志摩・・・貴方・・。」
志摩「玉依。お願い。独りにならないで。」
玉依がジッと炎を見つめている間、誰も玉依に近づかなかった。それが俺は寂しくて、玉依の傍にずっといた。
玉依「・・・貴方は、いい人になれるわ。」
ポゥッと、玉依は右手を光らせたまま俺の頭を撫でた。
志摩「・・たま、より・・・今の・・。」
玉依「・・・ささやかな私からの、プレゼント。生かすも殺すも、貴方が決めて頂戴。」
そう言って玉依はほほ笑んだ。
数日後、玉依は施設を燃やした連中と戦って、死んだ。
俺がその場所に行った時には、相手は全部死んでた。
玉依自身も、血塗れだったんだ。
志摩「玉依!!何で!!」
玉依「志摩、ごめんね。私は、いい人にはなりきれなかった。」
志摩「そんな事ない!!玉依は、玉依は・・・!!」
玉依「人を殺すような人は、いい人じゃないのよ。」
こんな状況なのに、玉依は笑ってた。
玉依「もう、私はいらない。」
志摩「なに、言って・・・。」
玉依「老いぼれの出番はもうなくなったのよ。」
見た目は全然年老いて見えなかった玉依だけど、戦前から生きてたって知った。もう、60は軽く超えてる計算になる。
玉依「これからは別の世界が始まる。その世界に私はいられない。」
志摩「玉依、何でそんな事・・・。」
玉依「新しい女王を、宜しくね。」
そう言って、玉依は眠った。
眠って、そのまま息を引き取った。
志摩「・・・玉依は、次の女王が誰なのかも知ってたんじゃないかって、最近は思うんだよね。ずっと写真見てたし。」
礼司「写真を見ているだけなら、予測していたとは限らないのでは?」