第30章 御柱タワー
シロ「初代女王・・・満月玉依は、僕も知っている。玉依は底なしに優しくて、誰にでも手を差し伸べる人だった。」
多々良「・・・。」
シロ「玉依が女王になった経緯は、僕も知らない。・・・けれど、玉依が女王になったと聞いて、僕は一度地上に降りた。」
礼司「・・・!」
シロ「玉依!!」
玉依「・・・あらあら、ヴァイスマン?久しぶり!」
久しぶりにあった玉依は、何も変わっていなかった。そう、“何も”。
シロ「玉依、何も変わっていないね。」
玉依「そうね。私は変わってないわ。そういう貴方だって変わってないもの。」
クスクスと玉依は笑う。
玉依「だから、私は私であれるのよ。ヴァイスマン。」
シロ「・・・?」
玉依「じゃなきゃ、私はここにいれないもの。」
シロ「玉依?」
玉依「ねぇ、ヴァイスマン?変化はいつでも起こってるのよ。」
シロ「変化・・・?」
玉依「ヴァイスマン、貴方にも変化はいつか訪れるわ。だからね、この世界を諦めないで。いつか、いつかきっと・・・貴方が心から笑える世界が広がるから。」
シロ「・・・玉依はそれっきり、笑って何も言わなかった。」
志摩「・・・玉依はね。俺達を守って、死んだんだ。」
礼司「・・・俺達、というのは?」
志摩「玉依が引き取った、子供たちの事。女王の存在に反対してた奴らが子供達の施設に火を放った。俺達は施設から逃げ出す事も出来なくて、死ぬはずだった。」
すでに、多くの子供たちが死んでいたさ。火はあっという間に広がって、煙も広がってたからね。
まだ火も回ってなかった部屋に転がり込んだのは俺を含めて4人。大人たちは他の子供たちと共に燃えた。
部屋には換気窓しかなくて、出れなかった。
このまま死んで終わりだと思っていた。けど、勢いよくドアが開いたんだ。
玉依「遅くなってごめんね・・・!!」
炎で燃えてしまったのか、ボロボロになった玉依が来たんだ。