第27章 交差
額に何かが乗った感覚がしてぱちりと目を覚ます。
果てしなく遠い天井。
むくりと起き上がってみれば、白を基調とした部屋。
ベッドに寝かされていたらしい。
「あら、お目覚め?」
声がしてそちらを向くと、御芍神紫。
紫「熱は下がったかしら?あ、何か食べれる?」
怜「・・・ここ・・?」
紫「あぁ、ここは貴女のために作った部屋よ。真横に私達が普段いる部屋があるわ。」
なるほど、通りで天井もなければ一辺だけ壁も何もないわけだ。
紫「あの襲撃の日から、軽く2日は経ってるわよ。・・・そのわりに体調はすぐれないみたいだけどね・・。」
御芍神紫はベッドの端に座ってこちらをのぞき込む。
紫「いつも調子が悪いわけじゃないのでしょう?」
怜「・・・近い。」
紫「あら、ごめんなさいね。」
怜は御芍神紫のいる方とは反対のベッドの端までズリズリと下がる。
怜「・・・目的は、何。御柱タワーに返して。」
紫「あらやだ。貴女は女王なのでしょう?なら、目的なんて1つよ。」
紫はベッドに乗って怜の傍に寄って来る。
紫「貴女の力を、私達の王に貸してちょうだい。」
緑の王。比水流。
灰色の王。磐舟天鶏。
彼らの王だ。
怜「・・・石盤を奪ったのでしょう。なら、私に用事なんてないはず。」
紫「貴女も知ってるでしょう?流ちゃんの事。」
彼は、迦具都事件によって失った心臓を自らの異能で補っている。だから彼自身の身体能力を操れるが、力を使いすぎると電池が切れたように動けなくなってしまうのがネックだ。
つまり、彼を半永久的に動けるようにしてほしいという事なのだろうか。
怜「・・・はい、そうですかって了承すると思ったの?」
紫「いいえ?だから彼を連れてこようってなってたんだけど・・貴女が逃がしたのでしょう?残念だわ。」
ここで言われている彼は、十中八九多々良の事だろう。
彼がここにいないという事は、吠舞羅に無事保護されたのだろうか。