第21章 眠る
すやすやと眠っている怜。
その両サイドには多々良と猿比古。
多々良「・・・。」
むくりと起き上がってベッドから出る多々良。
「何処行くんすか。」
多々良「・・・何だ、伏見起きてたの?」
猿比古「・・・まぁ。」
多々良「明日仕事あるんでしょ?仕事に響くよ?」
猿比古「仕事ある日はもっと遅い日あるんで。」
多々良はベッドの端に座る。
多々良「・・・怜ちゃん、どこまでも優しいよ。大して仲良くなかった俺を助けてくれるくらい。」
猿比古「・・・。」
多々良「それに、忠告だってしてくれた。戻ったら危険だとか、部屋から出るなだとかね。」
猿比古「・・・正直、アンタが死んだって聞いた時からそれを信じちゃいなかった。遺体がなかったのが一番デカかっただろうけど、アンタならフラリと現れる気がしてた。」
多々良「はははっ。伏見の中の俺は凄いねぇ。」
猿比古「実際、アンタは生きてた。」
多々良「・・・ねぇ、伏見。俺は吠舞羅をやめる事にしたんだ。草薙さんとアンナには言ってきた。」
猿比古は驚いたように顔を上げた。
多々良「・・・そんなに驚いた?」
猿比古「・・・何でか、聞いても?」
多々良「怜ちゃんに助けてもらったのもあるんだけど、でもそれ以上にさ、あの頃に戻れない気がしたんだ。」
猿比古「あの頃?」
多々良「そ。・・キングがいて、草薙さんがいて、皆がHOMRAでわいわいやってるの。・・キングは死んじゃったけど。でもそれ以上に、キングがいないだけの生活じゃないと思ったんだ。」
俺は、吠舞羅を捨てたんだよ。伏見。
そう悲し気な目で言う十束。
猿比古「・・・いいんじゃないですか。それで。」
多々良「・・え・・・。」
猿比古「アンタの選んだ道だろ。それに、草薙さんが反対しなかったんだから、いいんじゃないですか?」
多々良「・・・やっぱり伏見はいい子だねぇ。」
だから怜ちゃんは伏見を好きなんだろうね。