第7章 彼の本心
さて、次の心配は一松。
自身の本心を暴かれてしまったからとはいえ、大切な存在だったであろうニャンコを傷つけてしまった事実は、彼に影響を与えているだろう。
普段からやたらと自虐をする彼のことだから、かなり思いつめているはずだ。
そんな彼とは今まで大した関わりは持てていないものの、やはり放っては置けない。
まずは一松を探そうと今度は冷静に周囲を見渡しながら歩いていると、やがてある場所で私は彼を見つけた。
人気のない公園。
その、夕日に照らされた古いベンチに彼は腰掛けていた。
「一松、みーつけた」
「っ…アンタ、何しに来たの」
「何しに来たって…一松を探しに?」
「何で疑問系なわけ…あぁ、分かった。どうせおそ松兄さんにでも頼まれたんでしょ、ご苦労様。悪いけど俺は」
「別に頼まれてないけど」
「そんなことされても…は?」
ずっと地面に向けられていた彼の視線が初めて私の方を向く。
やっと私を見てくれたね、そう言うと彼は居心地悪そうに再び私から視線を外した。
「隣、いい?」
「……勝手にすれば」
「ありがとう。一松とこうして話すのは初めてだね」
「別に話したかったわけじゃない」
彼の態度は相変わらず頑なだ。
別に私のことが嫌いなわけじゃないのだろうが。……というか、そう思いたい。
「余計なお世話だった?」
「は、そんなの当然じゃん。俺は別に慰めて欲しくなんかないから」
「そうかな。私には…一松が誰かに話を聞いてほしそうに見えたけど」
「……は?」
確信はない。私はエスパーニャンコに本音を言い当てられた時の彼の様子は知らないし、その時どんな本音をバラされたかも知らない。
でも、今の彼はひどく寂しそうに見えた。
傍らにいた猫の不在、兄弟たちの不在。たった1人で公園のベンチに座る一松はとても小さくて。
彼の言葉を、聞かなければならないと思った。
「一松。私のことは野菜だと思うと良いよ」
「………はぁ??」
誰にも告げられていない、彼の本音を。