第8章 フラッグ生誕祭
そして、ハタ坊のお誕生日会当日。
プレゼントと、行きがけに買った小さな花束とお菓子を持って、私はハタ坊のビルを訪れた。
「ようこそお越し下さいました、さん」
「あ、こんにちは」
「ミスターフラッグは自室にて待っておられます。ご案内致しましょう」
出迎えてくれたのはやたら旗に反応するあのおじいさんと、時折見かける若い男性と眼鏡の女性だった。どうやら今日はこの3人が接客担当らしい。
別に案内などされなくても彼の自室は分かるのだが、折角のお誕生日会なのでここは素直に案内されることにした。
「〜来てくれてありがとうダジョー!」
「お招きありがとう、ハタ坊。お誕生日おめでとう」
案内された先は見慣れた彼の部屋で、どうやら誕生日だからと特別な装飾をしているわけではないらしい。
ハタ坊本人も普段と全く変わらないオーバーオール姿で(普段と変わらないのがいいのかは分からない)私を出迎えてくれた。
とはいえ、私も特別洒落た格好をしてきた訳では無いので人のことは言えない。ちょっとよそ行きのフォーマルなスーツを着ただけである。
「これ、良かったら、後日にでも食べて」
「ありがとうダジョー!綺麗な花ダジョー!!」
「ううんそっちじゃないよ!?こっち!!花は飾って!食べないで!!」
美味しそうだったジョー、と名残惜しくこちらを見つめるハタ坊はガン無視させて頂きつつ扉に控えていた執事さんに花を渡す。彼は心得たように頷くと、花瓶を取りに行ったのか一旦下がった。
「このお菓子はなんダジョ?」
「あぁ、ケーキとか甘いものはきっと今日たくさん出ると思ったから………」
開けていいよと私が促すと、彼はがさごそと紙袋から箱を取り出してその包装を剥がしていく。
やがて剥き身の缶が現れた瞬間、彼は何かを察したらしい。瞳を輝かせて蓋を開けた。
「おせんべいダジョー!!」
「誕生日に渡すものとしては地味なんだけど、ね」
甘いものばかりでは舌が疲れるのではと思って選んだ一品だ。
ババくさいとか言われてしまえば落ち込むしかないが、彼はそんなこと口に出さずに早速1枚取り出して食べようとしている。
その時だった。
凄まじい爆発音が聞こえた。