第7章 彼の本心
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫〜?」
「大丈夫じゃ、ない…!」
私たちが曲がったことに気付かなかったイヤミさんたちが去っていったことを確認して私を引きずり込んだ相手が話しかけてくる。
それに返答することもキツくて少し時間を置き、何とか息を整えた状態でやっと向き直った。
私を助けてくれた張本人、十四松に。
「どうしてここに?」
「猫探して走ってたらちゃんが走ってるのが見えたから!」
「そっか、ありがとう…探してる猫ってこの子で間違いない?」
「うん!!」
結構走ったから猫も疲れたのだろう、座り込んだ猫を抱き上げて確認のために十四松の前に差し出すと、彼はにぱっと笑う。
一松を庇った結果人の本心がわかるようになり、そのせいで一松を傷つけてしまった猫。
望もうと望むまいと分かってしまう本音は鳴き声と共にするりと口から出て、コントロールすることは出来ないのだろう。
大切な存在である一松を苦しめてしまったことが辛いのか、皆から拒絶されてるのが辛いのか、それは分からないけれど猫の瞳は寂しげだ。
私に抱かれてはいても、その温かさは求めている温もりではないのだから。
「あっ…」
すると、突然ニャンコはするりと私の腕から抜け出し、またどこかへ駆けていく。
慌てて追いかけようとした私だったが、それは十四松によって阻まれた。
「ちゃん…」
とても弱々しい声に抗議の声は出せなくなる。
「一松兄さん、猫のこと心配してるかな…」
耳に聞こえたやけに小さくてか細い声。
ここにいるのは私たちだけなのだから、声の主は自ずと絞られる。
しかし、私はどうにも信じられなかった。
いつもあんなに明るくて、空気なんて読まずに騒いで、やりたいことをやりたいようにやっている十四松がこんな泣きそうな顔をするなんて。
「…十四松?」
「ねぇ、ちゃん…俺、どうしたら良いのかな」
こんなにも、迷いを露わにしているなんて。