第4章 誰を養う?
「ふぅ…じゃあこの辺で終わりかな」
ホワイトボードを見ると、扶養スペースに3人、保留スペースに2人。
なるほど、確かに切り上げる頃合いかもしれない。
「母さんはもう3人取ったわ。後の3人は、父さんに相談しなさい」
これ以上長引かせて万が一全員合格してしまっては意味がない。
チョロ松には申し訳ないけれど、妥当だ。
「ありがとうね、さん」
「いえ、特にお役にも立てずに申し訳…」
「ちょ、ちょっと待って母さん!」
しかし追い詰められたことで、ようやくチョロ松が立ち上がった。
「冷静に考えて欲しいんだ、誰と暮らせば本当に幸せかを」
「…っ」
松代さんの瞳が揺れる。
その変化を感じ取ったのか、おそ松とトド松が野次を飛ばして面接を強制的に終わらせようとした。
しかしなおもチョロ松は話し続ける。
「六つ子の中で、一番の安パイは僕だよ。就職する可能性も高いし、結婚もするだろう」
「結婚は関係ないだろ!」
「話そらすなー!」
「関係ある!だって結婚したら……
孫の顔、見せてあげるよ?母さん…」
崖っぷちに立たされて彼も奥の手を使ってきた。
孫、それは親にとって魅力的な言葉。
すごい形相の息子に目の前で言われたとしても、それは驚異的な威力を放つ。
「良いですねぇ、孫。さぞかし可愛いでしょうね、"チョロ松"の子供なら」
「あ!ずりぃぞ!何でチョロ松だけ加勢してるんだよ!」
「ちゃん…!!」
「うるさい、そっちだって散々やったでしょ!私が誰に味方しようと関係ない!」
しかしこの助太刀が仇となったのだろうか。
松代さんは"孫"という夢に取り憑かれたようにその言葉を連呼し、あろうことか誰の性欲が1番強いかを聞いてきた。
「何なら今ここでさんと…」
「何言ってるんですか松代さん?!?!」
「え、別に良いよ?」
「何言ってんのおそ松?!」
私にもとばっちりがきた。
松代さんの冗談か本気かわからない言葉を受けて近づいて来るおそ松だったが、それをチョロ松が阻止してくれる。
その後彼が悪役を引き受けてくれたおかげで、おそ松の意識はそちら側に向く。
そして遂に乱闘が始まるも…
「やめなさい、ニートたち!!」
母の一声で止まった。