第4章 誰を養う?
ホワイトボードのそばで肩を組むおそ松とトド松。
椅子に座っているカラ松、チョロ松、一松、十四松。
彼らの間にさほど距離はない。
しかしこの隙間は、彼らにとっては天と地ほどの差。
未だアピール出来ていないのは、3人。
この中から、さらなる手口で面接を勝ち抜く人間は現れるのか。
「母さん!俺もだよ」
カラ松が立ち上がった。
ポケットに手を突っ込んでいる立ち姿はカッコいい気もするがどこか残念に映る。
そもそもその態度面接としては如何なものか。
「俺も一生働かずに、飯が出てくる人生を送りたい…ふっ」
彼の低めな良い声でそんな言葉を言って欲しくはなかった。
カラ松、長い間チャンスを待っていて選んだ手段がそれか。
「違う」
案の定瞬殺された。
落胆するカラ松にチョロ松が後ろから声をかける。
「それ、ただのクズだからね!」
追い討ちをかけるように。
そして極め付けとして彼のプレートが保留の欄に置かれた。
「……」
扶養決定が2人、保留が2人。
こうなるとおそらくあと合格できるのは1人。
チョロ松か、一松か。
そしてついに、一松の手が静かに頭上に伸びた。
ゆらりと立ち上がる彼はどこか恐ろしい。
思わず身震いしてしまった私は、冷や汗を流して一松の次の言葉を待った。
「俺別に一緒に暮らしたいとかはないけど。でも、誰かといないと何するか分からないっていうか」
待って物凄く怖い。
そしてすごく嫌な予感がする。
隣の松代さんも息を呑んだ。
「良いの?野放しにして。息子の中から犯罪者が出ても…」
これは面接というより、自己アピールというより。
「ご、合格です……共に暮らしましょう」
脅迫だ!!
「俺もだ!俺も狂ってるから、1人にしちゃ危険だぜ、マミー!!」
「………」
「もう黙ってろ、カラ松!最悪俺が養ってやるよ!」
……これは哀れだ。
いわば敵であるチョロ松が彼を養うと言ってしまっている。
放心状態のカラ松に、内心お疲れ様といたわった。